続・「銀河手帖」レビュー。曲ごとの印象&全体インプレッションです。
道標
これまでになかった1曲目、という印象。
振り返った時に、そこに転がっているものが、澄んだものばかりではないこと。でも、そういうものも一緒に連れていく、移ろいつつも、目指すところがある、そんな気持ちが「どこまでも続いてゆく潤んだ空」に映し出されているような気がする。
ドラムの「在り方」が、まさに山木さん…唯一無二!技術云々じゃなくて、在り方をどう思ったのか、というところが。
扉
ストリングスに彩られたまっすぐなサビが、美しい。歌詞は具象にも抽象にも過ぎず、受け手のイメージを受け止め広げる懐の深さを持っていて、前向きな気持ちが自然と生まれる。名曲。
Tell me why
この曲は作曲が外間さん。他の遊佐さんの曲でも数多く感じられた「新しい場所に来た」と思える感覚が同じようにあって、とても嬉しい。イントロの桑野さんのViolinの展開、「新しい風」という歌詞のあたりも、なんだか象徴的に聴こえる。「いまの遊佐未森を聴く」というのは、こういうことなんだな。
「喜びを結んだり 悲しみをほどきながら」「小さな希望(つぼみ)の歌が」のあたりの歌詞がすごく好き。ちなみにドラムは佐野康夫さん。outroのハイハットのトリルがオイシイ。佐野さん節、こっそり炸裂…(笑)
ミナヅキ
渡辺等さんワールド。曲調にぴたり寄り添う。たっぷりとした音場とクラリネットの音色がやさしく心地よい。楠さんの柔らかく深いシンバルとタイコも、遊佐さんを熟知してるからこそって感じであたたかい。
ショコラ
うっかり系(ブルッキーやMOVEなど、サウンド的にうっかり感のある曲)に行きそうで行かない、大人のスイーツです(笑)佐野さんの片手16分ハイハットが、サクサクのお菓子のよーだ。全編を通して、鈴木さんのフルートが奏でるもう一つのメロディーも味わい深い。
5月、エニシダ。
サキタハヂメさんのノコギリ(Musical saw)マジックが、心地よい渡辺等さんのウッドベースと溶け合う。その上に音とイメージの広がる余地がたっぷりと取ってあって。粋。
ripple
カワイイ!(笑)作曲はゴンザレス三上さん。ガットギターももちろん三上さん。ゴンチチテイストに遊佐さん、実に合いますね〜。ブラシがスネアの上を踊るようなビートも、さざ波や波紋のイメージをくすぐります。
花の二重唱
全然知識が無かったのですが、ちょっと調べたところ歌劇の曲だそうで。曲名通り二重唱、時に等さんとユニゾンしつつの清澄な調べはアルバムの中で素晴らしいアクセントに。
shine!
好きです、コレ。「素肌」にも通じる「遊佐さんらしさ」が、スパッと出てる曲だなと思う。コーラスワークもすごく好き。
1番が終わった後の展開、独特のビートは、山木さんならでは。ポプラのBメロで意表を突かれたのを思い出しました。歌詞には、井上妙さんが遊佐さんとともにクレジットされてます。
I’m here with you
タイトルから想像していたよりずっと、遥かに時空の広がりを持った、8分近くに及ぶ大曲。歌の後に続く尺八の息づかい、ギターの歌い方がとても心に響く。尺八は藤原道山さん、アコギが西海さん、Pedal steel guitarが高田漣さん。アルバムの最後へのつながりもとても美しい。
ピアニッシモ
アルバムをしめくくる、美しくやさしいメロディ。寺田創一さんがProgrammingで参加されています。
手帖を閉じて
遠鳴りのする音で綴じられた手帖には、聴き手それぞれが感じる銀河という読後感があり、想像を書き込む余白も、たっぷりと取ってあり。
…またひとつ、宝物がふえました。